プラットフォーム・コーポラティビズム=未来のシェアリングエコノミー

2010年代の発売

Uberを筆頭としたプラットフォーマーを中心に世界中で急拡大している”シェアリングエコノミー”。
マーケットの成長の陰で、格差の拡大など課題もみえてきました。
資本主義の限界を唱える識者が増えてきたからこそ、協同組合という組織を通して”プラットフォーム・コーポラティビズム”という概念を覚えておきましょう。

【良書紹介】ネクスト・シェア

書籍タイトル:ネクスト・シェア
著者:ネイサン・シュナイダー Nathan Schneider
訳者:月谷真紀
発売日:(原著)2018年9月 (日本語版)2020年7月

協同組合と聞くと、なんだか古くさく、前近代的な組織と思われる方も多いでしょう。かくいう私もその一人でした。本書を読めばそのようなイメージも覆ることでしょう。
実は協同組合は国連の提唱するSDGsの達成のためにも重要な組織として期待されています。

そんな古くて新しい協同組合が、なぜ今注目されているのでしょうか?

協同組合と株式会社の相違点

協同組合の特徴は2点あります。

  • 出資と引き換えに素早いリターンを求める機関投資家の存在がない
  • 議決権は一人一票の原則。組合員による民主的な運営が可能

株式会社(主にシリコンバレーのベンチャー)の弊害として、
VC(ベンチャーキャピタル)や資本家が、多額の出資と引き換えに、企業へスピード経営とリターンのスケール規模を強く求められることがあげられます。

そもそもVCは数多く出資した中から、あまりにも低い確率の成功企業からリターンを得るというビジネスモデルです。
失敗した投資も含めて、成功した投資先企業からリターンを得ないと成り立たちません。

そのような背景から、出資を受けたベンチャーは資本主義の原則のもと、成長を加速することが大命題になります。

現在のシェアリングエコノミーの弊害

UberやAirbnbを筆頭とするシェアリングエコノミーのプラットフォーマーは、
ワーカー(Uberドライバーなど)と利用するユーザーをマッチングする仕組みをテクノロジーで構築しています。
少数スタッフでの運営と数多くの投資家からの資本提供により年々成長を続けており、
破壊的イノベーションの典型としてタクシー業界などの既存市場の事業そのものを奪いつつあります。
さらにドライバーなどのシェアワーカーの収入や生活レベルも決して安泰とはいえません。
富の分配の観点からもプラットフォーマーと投資家のみが勝者という、いびつな構造とも思えます。

プラットフォーム・コーポラティビズムとは

巨大プラットフォームへの課題から、注目されつつある概念として
プラットフォーム・コーポラティビズムがあります。

ビジネスを営むプラットフォームの所有権を、ワーカーとユーザーで共同保有され民主的な意思決定を行う概念です。
シェアリングエコノミーという大きな枠組みを
サービスそのものを提供するシェアワーカーや、
サービスそのものを利用するユーザーまでフェアに考え民主的に運営しようというのが、
プラットフォーム・コーポラティズムの考えです。
そのような運営によって、組織の構成員すべてに利益が適切に分配することが可能となります。

これから読む人へのアドバイス

本書では、プラットフォーム・コーポラティビズムを実践しようとしている協同組合的組織の事例が数多く掲載されています。

  • 返すつもりのない事業資金を複数の銀行から集め立ち上げたスペインの地域通貨
  • Uberへの対抗としてアメリカで立ち上がったタクシー組合

日本は他国に比べ規制改革が進んでないため、シェアリングエコノミーが完全に上陸しきっていません。

より良い未来を迎えるためにも、シェアリングエコノミーの本質を本書から読み取ってみましょう。

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